Unity Relay β でリレーサーバを建てて入室する【Unity Gaming Services】
Unity Relay
Unity Relay は Unity 公式のリレーサーバ作成用のサービスです. Unity Relay を利用することで,ホストプレイヤーがリッスンサーバとしての中継サーバを作成することができます. ローカルプレイヤーはこの中継サーバにジョインすることでリモートプレイヤーとやり取りを行うことができます.
記事作成時はベータ版となっております.
サンプルプロジェクト
サンプルプロジェクトを作成したので,よければ参考にしてみてください.
検証環境
- Unity 2021.2.0f1
- Unity Authentication 1.0.0-pre.6
- Unity Relay 1.0.1-pre.3
- UniRx 7.1.0
- UniTask 2.2.5
- Zenject 9.2.0
動作の様子
Unity Relay の最小サンプル (動画だけじゃあ文字の羅列) pic.twitter.com/J1xknhpoKW
— Denik (@xrdnk) 2021年10月30日
動画だけでは何をやっているかわからないと思うので,説明しておきますと,以下の通りになります.
- Unity Gaming Services 利用のために匿名認証処理
- リレーサーバを立てるリージョンの検索
- 選択したリージョンでリレーサーバを作成(アロケーションという)
- アロケーションID(ここではホストプレイヤーとしてのID)の取得(≒ リレーサーバが作られた)
- アロケーション入室用のコード(ジョインコードという)の取得
- ジョインコードを利用してアロケーションに接続(入室)
- 6 で入室した時のアロケーションID(ここでは通常プレイヤーとしてのID)の取得
インストール方法
Add Package by Name に com.unity.services.relay
を追加することで完了します.
あるいは manifest.json に以下を追加すればできます.
"dependencies": { "com.unity.services.relay": "1.0.1-pre.3", }
解説
フロー
サンプルプロジェクトの動作の様子の方で流れを軽く説明しました. Relay サービスのフローをアニメーションで整理すると以下のようになります.
Unity Relay の基本フロー pic.twitter.com/8I0lkVVDQt
— Denik (@xrdnk) 2021年10月30日
以降では,細かく説明していきます.
準備設定
まず,Unity Relay を利用するために準備が必要になります. Unity Editor 側で Project Settings > Services で Unity Project ID を設定します.
次に Unity Dashboard 側で Relay を利用したいUnity Project を選択します. そして,Get Started から表示されている手順通りに進めば Relay が ON になります.
ベータ版では,Lobby も一緒に ON にするかのダイアログが表示されます. ベータ版では両方 ON にしないと利用できないっぽい?のでここでは ON にしましょう.
これで UGS の Relay を利用できる準備が完了しました.
認証処理
Unity Gaming Services は基本的には Unity Authentication で認証を通してからでないと使えません. なので,一回 Unity Authentication でサインイン処理を行っています.簡易のため今回も匿名認証を利用します.
リージョン取得
まず Unity Relay というのは以下の2つのコンポーネントで形成されています.
- Allocation Service (Unity Relay のエントリーポイント.リレーサーバを割り当てる)
- Relay Server(リレーサーバ自体)
リレーサーバを建てるにはアロケーションサービスを通す必要があります. (つまり Allocation Service は Unity Relay におけるエントリーポイントのような感じ)
アロケーションというのは「リレーサーバ上の論理的なセッション」を意味しております. リレーサーバの割り当てというイメージでいいかもしれません. ベータ版の現在,リレーサーバが建てられるリージョンは以下になります.
- Southeast Asia - Singapore (東南アジア:シンガポール)
- West Europe - London (西ヨーロッパ:ロンドン)
- East United States - North Virginia (米国東部:ノースバージニア)
- Central United States - Iowa (米国中部:アイオワ州)
最も近いリージョンを選択することで,レイテンシーを抑えることができるので, 基本的には東南アジアのリージョンを選択することになります.
await Relay.Instance.ListRegionsAsync();
を叩くことで,リージョン一覧を取得することができます.
アロケーションの作成
await Relay.Instance.CreateAllocationAsync(maxConnections, regionId);
を叩くことで,
アロケーション作成の要求を行います(リクエストは HTTPS 通信になっています).
アロケーションを作成する際,「最大接続人数」と「リージョンID」を指定する必要があります.
アロケーション作成に成功した時に,アロケーションデータが返ってきます.
アロケーションデータには以下を含みます.
入室コードの取得
アロケーションデータが返ってきた後,ホストプレイヤーはリレーサーバに入室用のコードを要求することができるようになります. 返ってきたアロケーションIDを利用して,入室コードを要求します.要求に成功すると入室コードが返ってきます.
/// <summary> /// 入室コードの取得 /// </summary> public async UniTask<string> GetJoinCodeAsync(Guid allocationId = default) { try { _joinCode = await Relay.Instance.GetJoinCodeAsync(allocationId == default ? _hostAllocationId : allocationId); Debug.Log("GetJoinCode: " + _joinCode); } catch (RelayServiceException ex) { var msg = ex.Message + "\n" + ex.StackTrace; Debug.LogError(msg); throw new RelayServiceException(ex.ErrorCode, ex.Message); } return _joinCode; }
簡易のため,ガバガバな AllocationId の渡し方をしています. ここで正しくない AllocationId を渡すと RelayServiceException の例外が発生します.
アロケーションと入室用コードは,ホストプレイヤーがリレーサーバ接続している間において有効です. ホストプレイヤーがリレーサーバーとの接続を解除したり, 接続がタイムアウトしたりするとアロケーションや入室用コードは無効になります.
入室処理
最後に取得した入室用コードを利用して,リレーサーバに入室する処理を行います. サンプルではリレーサーバを建てたホストプレイヤーがリレーサーバに入室するというおかしなことを行っておりますが, ここは本来はホストプレイヤーが別のリモートプレイヤーに入室コードを何らかの方法で伝授し, 各リモートプレイヤーがリレーサーバに入室処理を行うのが想定だと思ってください.
/// <summary> /// アロケーション入室処理 /// </summary> public async UniTask<Guid> JoinAllocationAsync(string joinCode = null) { try { var joinAllocation = await Relay.Instance.JoinAllocationAsync(joinCode ?? _joinCode); _playerAllocationId = joinAllocation.AllocationId; Debug.Log($"ClientAllocationID: {_playerAllocationId}"); } catch (RelayServiceException ex) { var msg = ex.Message + "\n" + ex.StackTrace; Debug.LogError(msg); throw new RelayServiceException(ex.ErrorCode, ex.Message); } return _playerAllocationId; }
入室処理に成功すると入室アロケーションデータが返ってきます. 解釈としては入室したアロケーションにおけるそのプレイヤーのデータのようなものに近い感じ…? ともかくジョインアロケーションIDは入室したアロケーションにおけるプレイヤーIDでいいと思います.
ここまでのフローを成功すれば,入室プレイヤー同士とやり取りを行うことができるようになります.
リレーサーバのライフサイクル
Unity Relay の リレーサーバは長期間の運用とマルチテナントを前提に設計されています. そのためリレーサーバーのライフサイクルはゲームサーバーのライフサイクルとは独立しており, ゲームデータや試合情報を一切知りません. プレイヤーがリレーサーバーに参加し,プレイヤーのゲームクライアントがデータを交換し,そしてプレイヤーが切断します.
リレーサーバーがプレーヤーを切断するのはプレーヤーの接続がタイムアウトした場合だけです. リレーサーバーがプレーヤーからの Relay Message Protocol メッセージを10秒間(Time To Live はデフォルトでは10秒) 検出しないと,プレーヤーの接続がタイムアウトします.
意図しないタイムアウトを防ぐために,ゲームクライアントは UDP 経由でリレーサーバに定期的に pingメッセージを送信して接続を維持することができます. プレイヤーやゲームクライアントは「close」メッセージを送信することで いつでも明示的にリレーサーバーとの接続を切ることができます.
ベータ版における制限
ベータ版の段階では以下の制限があることに注意ください.
- Unity Transport Package(UTP)のみ対応,かつ UDP パケットのみ対応
- ネットワークコードに Relay Allocation SDK を実装する必要がある(Allocation Service を利用すること)
- リレーサーバは4つの地域でのみ利用可能.東南アジア(シンガポール),西ヨーロッパ(ロンドン),米国東部(ノースバージニア),米国中部(アイオワ)
- プレイヤーは同じゲームセッション(アロケーション)内の他のプレイヤーとしか通信できない
- Unity Relay には失敗したアロケーションを再ルーティングするロジックがありません.アロケーションに失敗した場合はアロケーション要求を再送信する必要がある.リージョンの容量が不足していてアロケーションに失敗した場合は,近くの別のリージョンにアロケーションを送らなければならないかもしれません
- リージョンロック機能はありません.リージョンに十分なキャパシティがあれば,誰でもどのリージョンでもアロケーションを要求することができます
- Unity Relay サービスでは,ホストが選択した1つのリージョンを介してすべての通信が行われるため,リージョンをまたいだ通信では最適なレイテンシーが得られない場合があります
- 1つマッチングに対する最大CCUは10人です
- Unity Relay はマルチプレイヤーのゲームステートの伝送のみを目的としています(つまり,Unity Relay に適さない用途で利用した場合は利用規約に基づいて料金を制限したり,解約したりすることがあります)
Unity Relay の不正使用には,以下のような例が含まれますが,これらに限定されません.
- ボイスチャットを含む、あらゆる性質のオーディオストリーミング (Vivox などを使いましょう)
- あらゆる性質のビデオ・ストリーミング (Agora などを使いましょう)
- ファイル転送サービス
- ゲームプレイとは無関係の分散型計算(暗号化されたマイニングを含む)
- 一般的なネットワークプロキシおよびその他のVPN類似サービス
参考資料
今回もドキュメントが丁寧でした. docs.unity.com
Relay 関係の専門用語などが沢山あるのですが,その用語集に関するドキュメントも充実しているので読むとよいです.